西日本豪雨災害 DVT検診に参加して

済生会呉病院 河野雄一

 深部静脈血栓症(DVT)は東日本大震災、熊本地震等の災害で、避難所生活をされる方の発症リスクが高いことが知られています。今回広島県で発生した豪雨災害において、DVT予防のため、広臨技が広島県と協力して実施したDVT検診に参加しましたので報告します。

 検診当日、呉市から坂町まで、土砂崩れによって鉄道、高速道が寸断されたため、復旧した国道31号線は、慢性的に渋滞が発生し、平常時なら車で40分ぐらいですが、2時間かかりました。 広島市方面から参加の4名の検査技師と医師1名と現地で合流し、土砂災害の爪痕が残る中、坂町にある3つの避難所を回り、20名の検診を行いました。 現場では、臨床検査技師が避難所を運営している自治体や保健師の方に、DVT検診をうけていただくために訪問したことを説明し、検査場所の設営(電源、椅子等の準備)後、避難所の方に声掛けをして、積極的に検診を受けてもらいました。統一された質問票を使って、問診を行い、血圧、酸素飽和度測定、下肢静脈エコー検査を実施し、必要があればDダイマー測定を行いました。検査後はこれから続く避難所生活による血栓予防のため、弾性ストッキングの履き方の説明を担当しました。

 普段、病院で行う検査の場合、患者情報を参考にしながら、使い慣れた機器でエコー検査を施行しています。避難所でのDVT検診は日常検査と違い、情報が少ない中、使用したことがないポータブルのエコー機での検査となり、使用方法に慣れるまで時間がかかってしまいました。短時間で多くの方を検査するため、事前に検診の流れや機器確認など準備の重要性を感じました。 また、会場の設営から検査終了まで、滞りなくDVT検診を行うにあたって、他職種、自治体との連携や協力が不可欠でした。検診には広島県医師会より医師が同行して頂いたので血栓が見つかった方は診察を行い、速やかに医療機関に紹介することができました。

 私が参加した日は、熊本から熊本地震の際にDVT検診の経験がある検査技師が応援で参加していたので、検診の運営やエコーの撮影法が聞けて、とても参考になりました。 災害はいつ起こるか予測できません。DVT検診は災害時に検査技師が関わり、災害医療として貢献できる領域なので、普段から準備しておく必要性を感じました。  日臨技のホームページに、過去の災害時に技師会が実施したDVT検診の経験が、DVT検診マニュアルとして作成され、掲載されていますので御一読下さい。 今回、貴重な経験をさせてもらいました。災害から一ヶ月経ちましたが、継続した支援は必要ですので、DVT検診のボランティア募集があった際には、参加する技師が増えてほしいと思いました。