第44回呉地区七夕学会 ~豪雨災害による中止決定から延期開催までを経験して~

呉地区理事 呉共済病院 柴田 淳

 去る平成30年12月22日(土)、呉市内の呉海員会館(ビュー・ポートくれ)において“第44回呉地区七夕学会”が開催されました。この学会は、西日本豪雨災害の影響により、当初開催予定であった同年7月7日からの延期開催となったものであります。今回、その際の中止決定から延期開催までの経緯を中心に、本学会の様子をまとめましたので報告いたします。

  今回で44回を数える広臨技において最も歴史と伝統のある七夕学会は、例年7月の第1土曜日を開催日としております。今年度は3月3日に第35回広島県医学検査学会を、呉地区開催として終えたばかりでしたので、呉地区委員会では計画段階で、準備期間の短さや演題が集まるか等の不安要素が多く、開催に躊躇する意見が出されていました。しかし、7月7日(土)に会場が確保できたため、縁起の良い“七夕の日当日開催”として張り切って準備を進めておりました。   

 学会前日6日(金)、天気予報のとおり午後から続く大雨の影響で、私の職場でも「職員を早めに帰宅させるよう」指示が出されました。帰宅後も降り続く雨。テレビの天気予報から目が離されない時間が続きました。携帯電話に地区委員から「この天気で明日、学会は開催するのか?」との問い合わせや、「自宅近くから土砂の匂いがしており、何かの被害が発生している様子。明日の学会への出席は困難」とい う連絡も入りました。PM 8:00を過ぎた頃、私の自宅(呉市本町)近くの国道185号線では膝下くらいまで冠水しましたが、一時的でありましたので、この時点では「明日の学会は参加者が減るかもな…」と心配しながらも、翌日の学会挨拶を考えておりました。  

 日付が変わり7日(土)、断続的に降り続く雨と携帯電話の防災速報により、何度も起こされ、気象情報をチェックする夜でした。夜が明けたAM6:00頃、地区委員の一人から「道路の渋滞により車中で夜を明かした。学会の備品を積んでいるので、開始までに何とかルートを探して会場に向かいます」との驚くべき連絡。他にも帰宅困難であった技師が複数名あるとの情報も入りました。テレビでは県内各地の大雨被害や、道路、交通機関の麻痺を伝えています。

 AM 6:30、「学会開催を強行するレベルの状況ではない」と判断しました。しかし、百数十名もの会員・賛助会員が参加予定である学会と懇親会を、“当日の中止決定”する事への影響や、演者や参加予定者への連絡方法、会場の当日キャンセルの可否、キャンセル料の発生、等が頭を過り、簡単には決断出来ませんでした。広臨技 森田会長に相談したところ、「学会中止に伴う損害に対し、技師会から援助の用意がある」との申し入れを頂きまして、地区委員会計担当者である呉共済病院の佐々木 彩技師と協議の上、AM 7:00過ぎ“七夕学会中止”を決定しました。  

 中止決定後は佐々木技師と分担して、演者および参加予定者と会場へ連絡を開始しました。呉地区各施設の演者および学会参加予定者には地区委員を通じて、広臨技理事の方々には森田会長より、賛助会員には直接あるいは代理店担当者様のご協力を得て連絡しました。学会会場の準備開始が正午からでしたので大急ぎで連絡しまくり、AM10:00までにはほぼ全参加予定者に連絡を終えることができました。また、学会および懇親会会場には交渉を行った結果、この事態を理解して頂き、キャンセル料は免除頂きました。

  こうして七夕の日の七夕学会開催は白紙となった訳ですが、多くの発表者が一生懸命準備した演題を無駄にしたくない思いが強くあり、また本学会は日臨技推進事業であるため、年度内の開催に向けて時期をうかがっていました。しかし豪雨災害が残した爪痕は甚大であり、人的被害だけでなく、ライフラインや交通網の麻痺が続くと、9月に入っても学会再開の計画など考えられる状況になりませんでした。  秋に入り、多くの関係機関の不眠不休の努力により復興が進みました。JRおよび高速道路網の復旧により、呉地区圏外からの学会参加者の交通が改善されたため、延期開催の準備を進め、晴れて12月22日(土)の開催に至りました。  

講演される森田会長

 年の瀬迫る学会当日、寒空の下、参加者は学生、賛助会員を含め103名と多数あり、ありがとうございました。プログラムは一般演題6題、広臨技活動報告1題、特別講演2題の内容で開催しました。この七夕学会は『若手技師に発表の機会を与え、呉から中四国さらには全国学会への登竜門』として位置づけられており、一般演題には若手を中心にエントリーして頂きました。会場からはベテラン技師から自施設の経験を交えた意見も出され、発表された技師の皆さんには大変よい経験になったのではと思います。

  森田会長による『広臨技の西日本豪雨災害対応 ~呉地区における活動報告~ 』は、災害地である呉地区の技師として報告を聞きたく、急遽組み込ませて頂いた内容でした。

 小林 剛技師(呉共済病院)による特別講演Ⅰ 『日臨技・短期海外留学に参加して ~広島から世界へ! 英語力ゼロからの挑戦~ 』は、日臨技の短期海外留学制度を利用して、米国シカゴの“Loyola university medical center”で1週間実施された研修に参加された報告です。チャレンジ精神旺盛な小林技師が、この留学に挑戦するに至った経緯から、日米の検査業務スタイルや設備の違い等、食文化の紹介を交えながら大変興味深い内容の講演でした。演者の普段を知る者として、彼の物事への取り組み方、英語学習の努力の成果を知って頂き、嬉しく思っています。

講演される金本技師

 特別講演Ⅱ『あなたは好かれる人?それとも嫌われる人?』の演者、金本 實 技師(三次地区医師会臨床検査センター)は、心理カウンセラーをはじめ多分野の資格を有されており、様々な社会活動や地域作りをされている方です。人間のタイプを、クイズ形式の自己診断も交えながら解説して頂き、巧妙な話術で楽しく聴講することができました。業務だけでなく日常生活での人付き合いに活かされる、大変役立つ内容でした。

  懇親会は会場を呉阪急ホテルに移動し、84名の参加者の下、新人紹介や景品の抽選会で盛り上がり、最後は一本締めにて会を終了しました。 学会の計画から当日の運営を通じて、地区理事に就任して間もない時期に起こった、自分にとっては困難な出来事もありましたが、今回の経験は非常に貴重なものとなりました。伝統のある呉地区七夕学会が高い評価を得てきた理由は「技師会員・賛助会員を含めた協力体制が適切に実施されている」という事を知りました。皆様のご協力をいただき、無事運営することができました事、厚くお礼を申し上げます。