2020年度第一回生涯教育講座 レポート

 2020年9月10日(木)に2020年度第一回生涯教育講座が行われました。今年度の研修会は、新型コロナウイルス感染症防止のため中止や延期となってきました。その中、今回の生涯教育講座はTKPガーデンシティホテルの現地会場による講義とCisco Webexを使用したオンラインによるLive配信の形式がとられました。広島県臨床検査技師会としては初めてのWebexを使用したオンライン研修会となるため、ドコモのスタッフによるWebexのテストも行われ、いつもの研修会の会場準備とは少し違う配線やスピーカー・音響チェックなどが入念に行われていました。さらに、現地会場では聴講される方のマスク着用ならびに入室時の手指消毒・検温と感染対策が行われたうえでの研修会となり、これからの研修会の在り方を見せていただきました。

 今回の生涯教育講座は「薬剤師×アスリートの視点から見たアンチドーピング」と題して広島ドラゴンフライズアンバサダーの岡崎修司先生によるご講演でした。岡崎先生は薬剤師でありながら広島ドラゴンフライズの選手としてご活躍し、現在はアンバサダーという形で広島ドラゴンフライズにご貢献されております。そのため、スポーツ選手としての観点はもちろん薬剤師としての観点からもドーピングについて話して頂きました。選手として在籍していた時のお話として、実際にチーム全体でドーピング検査を受けた時のエピソードを聞かせていただきました。尿が出るまで拘束されてしまうという環境で緊張する選手もいたとのことでした。海外では、活躍したい・金メダルをとりたいという気持ちからドーピングに手をだしてしまうというスポーツ選手も少なくはないようで、アスリートの気持ちは分かるけどもドーピングはダメだと啓発活動を行っているそうです。日本では、「うっかりドーピング」が多いといわれています。うっかりドーピングとは市販の風邪薬やサプリメント・病気の治療薬などに禁止薬物が含有されており、結果的にドーピング違反となったことをいいます。インターネットを使用してすぐに調べられる時代だからこそ、アスリートの方々はネット上に書かれてある「ドーピングにならない・安全です」といった文言を信用して、服用してしまいます。しかし、その言葉は実際に「禁止薬物が含有されていない」と立証できていないものも多いようで、アスリートの方々がうっかりドーピングにならない環境づくりが必要とのことです。

 検査の繋がりとして興味深かった話は、薬物を調べる検査の感度が高くなってきていて、今まで陽性とならなかった医薬品やサプリメントが陽性となってしまったケースもあるそうです。そのため、過去に陽性となっていないものだから安全ですと言えるわけではなく、含有物質や現在の検査状況をしっかり把握して相談できる存在が必要です。その点、広島ドラゴンフライズは薬剤師である岡崎先生という相談窓口があることが選手にとって強みでしかないなと感じました。

 岡崎先生の言葉ですごく印象に残っているのは、ご講演終了後の質問で薬剤師とアスリートの文武両道についての苦労を聞かれた際に「大事なのはやりたいという意思と時間管理である。」と涼しい顔と爽やかな声で仰っていました。これまでの多くの実績や経験の裏で、どれだけの努力を積み重ねればこの重みのある言葉をさらっと一言で言えるのだろうか。そんなことを考えると、全身に鳥肌が立っていました。おそらく、この言葉は文武両道だけじゃなく全ての事象に当てはまるフレーズで、これからの人生で実績や経験を積み上げていきたい若輩者には心に刺さる一言でした。私もいつかこの言葉をさらっと清涼感溢れるソーダのような顔で言うために、努力をしていきたいと感じました。

 今回の生涯教育講座はLive配信も行われたため、Live配信聴講者に感想を伺ったところ「Webexのシステム音などが聞こえすぎる箇所はあるが、司会者や講師の声は聞こえやすかった。」と言われていました。広島県臨床検査技師会としては初めてのWebexを使用した研修会であったため、生涯教育委員の皆様は準備で大変ご苦労されたと聞きました。研修会終了後には、マスクで隠れてはいますが委員の皆様の安堵した笑顔が見えたような気がしました。今後、研修会を行っていくうえでの礎となる素晴らしい研修会でした。

 講師をしていただき、ご講演前後でご質問に答えてくださった岡崎先生はもちろんのこと取材を快諾してくださった生涯教育委員のみなさまに感謝申し上げます。

広報部 村田 竜也