この度、第52回中四国支部医学検査学会が2019年11月2~3日の2日間にわたり島根県民会館、サンラポーむらくもにて開催されました。令和最初の学会テーマは「検査の力―臨床検査の可能性を求めて―」として島根県臨床検査技師会、三島清司学会長により開会の挨拶がなされ本学会が幕を開け、学会参加人数は約1000名、情報交換会は約300名もの方々が参加されました。
一般演題は総合計153題、特別企画・演題数37題、ランチョンセミナー14題、34社の企業展示がありました。
平成30年12月1日の医療法改正にて精度管理を行っていくための基準が初めて文書化されました。日臨技としては検体検査の精度の確保に係る精度管理責任者育成のための講習会、標準作業書及び作業日誌等の文書類の雛型をHP上に掲載し、さらにイーラーニングでの説明を行いました。また、参加拡充に向けて精度管理調査に参加されていない施設にアンケートが実施されました。
全国的にISO15189を取得される施設も多くなってきたと思いますが、取得に対して難渋された施設も少なくないかと思います。最近の取得施設の分類は国立(私大を含む)67施設、総合病院73施設、登録衛生検査所75施設の取得状況ということでした。
特別企画として「臨床検査の品質・精度の確保に第三者評価をどう活かすか」という講演では『品質』とは何か?検査室の商品とは何か?という内容で講演され、『最終的に品質とは中心にあるものとして『安心』という言葉を取り巻いているもの(データ、品質等)をまとめたものが検査室の商品の一つであり、この質を上げることによって対象の顧客(カスタマー)の安心を得ること、これが検査室の商品ではないか。』とおっしゃられていました。また、シンポジウムでは「生理学的検査の精度管理と教育―ISO15189を活用した取り組み―」としての講演があり、取得された立場からのお話が聞けました。ISO取得に対して様々な質問があり、それぞれの施設で創意工夫をされていると感じました。
特別講演では、今後の医療界への進歩と導入が予想されるAI(人工知能)が臨床検査とどのようにつながっていくかという講演がありました。採血は人でしかできないと言われていましたが、自動採血ロボットという試みが報告されています。赤外線と超音波で自動的に採血できる仕組みとなっており一回での成功率は83%ということで的中率に驚きました。
今後のAIは急速な進歩を遂げると思われ、検体検査や採血、生理検査でもAIが活躍する日がくるかもしれません。しかし、『最終的な消費者は患者であるという視点が大事であり、AIの導入により消えていく仕組みもあるが、AIができることはAIに任せることで検査に余裕ができ、より患者と接する機会が増えると考えると、そのための道具に過ぎないのではないか。医療従事者はAIをうまく利用し、AIにできないコミュニケーションを身につけ患者に寄り添う医療、感謝されることを喜びとすることが大事。』とおっしゃられていました。AIはとてもすばらしい存在だと思いましたが、その半面、各々の医療職種の存在意義を失いかねない存在にもなりえるのだという危険も持ち合わせています。その中で、AIにはできない『患者に寄りそう医療』を目指していかなければならないと思いました。また、ランチョンセミナーでは『CTでは分からなかったことが超音波で発見できた。』という話を聞き、検査には様々な診断材料(機械など)があるが、その機器の得意・不得意分野を見極め、機械の強みを生かした検査を遂行していくことが大事だと思いました。
日臨技企画の宮島会長の講演では、将来の臨床検査技師に対する教育に関する話もあり、我々検査技師も自分の力を強くするために、いろんなことに挑戦していかなければならないと感じました。
最後になりましたが、今回本学会に参加された皆様、関係者の皆様、運営に携わられたスタッフの皆様には厚く御礼を申し上げます。
広報部 土橋