この度、第 37 回広島県医学検査学会の一般演題 「グラム染色所見と MALDI Biotyper による同定が診断に有用であった Brachyspira pilosicoli による腸管スピロヘータ症の 1 例」の演題において、 数ある演題の中から優秀演題賞として表彰されたことを大変嬉しく思います。
今回報告させて頂いた症例は、日常業務の中で中々出会うことがない稀な症例であり、経験したことがある場合と、そうでない場合で大きく検査の方向性が変わってくる症例であったと思います。 自分自身も本症例を通じて多くのことを学び、今後の業務の中に活かしていける知識や経験を多く身に付けることができました。本症例は病理組織 学的検査で診断がつくことの多い疾患でありますが、提出検体のグラム染色所見で、迅速に本疾患 の可能性が疑われることを臨床にフィードバック 出来たことは、グラム染色による迅速診断の有用性を改めて認識できた重要な機会であったと感じております。また、本症例において提出された検体が腸管由来であったことと同時に、検出された菌種はスピロヘータ目に属する Brachyspira pilosicoliであったことなどから分離培養、菌同定に至るまでにとても苦慮しました。多数の腸内細菌の中から目的の菌だけを分離するには、より工夫した培養の仕方が必須であり、今後の課題として、このような特殊な症例に出会った時のための準備を、今まで以上に行っていく必要性を感じました。担当した微生物学的検査の結果だけでなく、臨床症状や病理組織学的検査、大腸内視鏡検査など複数の所見が組み合わさることで、原因となる因子の特定や治療に結びついたという経験は、臨床や他分野の検査担当者とのコミュニケー ションを、今後より一層大切にしていこうという 気持ちを強くさせました。また今回の経験も踏ま え、今後も継続してより多くの研修会等へ参加し、 臨床検査技師としての知識を深めていこうと考えさせられました。
最後に、審査していただいた先生方、広島県医学検査学会の実行委員の皆様、本発表にあたりご 指導してくださった先生方に深く感謝申し上げます。
JR広島病院 診療部 臨床検査科 原田耕輔