2019年11月10日(日)、三原国際ホテルにて第21回東部地区学会が開催されました。今回の東部地区学会は、一般演題6題と、教育講演「地域に飛び出した臨床検査技師の取り組み」、そして特別講演「高齢者の生き方に医療者はどう答えるべきか」という内容で進行しました。
一般演題は、生物化学分析部門が1題、臨床生理部門が1題、輸血細胞治療部門が1題、臨床微生物部門が1題、病理細胞部門が2題でした。東部地区学会は若手技師の登竜門ともされており、若手技師の方々も多く発表されていました。自施設における取り組みや経験した症例など、どの発表もしっかり検討されており、とても興味深い内容ばかりでした。会場からも活発に質疑応答が行われ、大変盛り上がりました。
教育講演では、広島県廿日市市地域支援員の黒木真由先生をお招きし、「地域に飛び出した臨床検査技師の取り組み」と題し講演をしていただきました。黒木先生は広島市立安佐市民病院で臨床検査技師として5年間勤務されたのち、現在は廿日市市浅原地区の地域支援員としてご活動されています。「JAMT magazine」2019年新年号にて掲載された「若手技師との新春座談会」に参加され、そのなかで地域医療について語られました。またその他にホームケアクリニックでの勤務や認知症の講習会講師、FMはつかいちのパーソナリティなど多方面でご活躍されています。黒木先生はおばあさまが病気になられたことがきっかけで、「病院から帰ったあと、患者さんは自分の地域で安心して生活できているのだろうか?」「病気を治すことだけが医療だろうか?もっと人々の心と寄り添った医療がしたい!」と考え、そのための活動を決意されたそうです。また、実際のコミュニティナースの方と知り合ったことも大きなきっかけだったそうです。コミュニティナースとは、「いつも地域の中にいて、健康的な町づくりをする医療人材」のことです。地域住民の方々と信頼関係を築きながら、自身の医療者としての専門性や知識を生かした活動を行い、地域の人々がいつも楽しいと思えるような町をつくることが活動目的です。黒木先生は現在、地域支援員として、イベント企画、広報活動などの町づくりに関する活動のほか、地域サロンへの参加、自宅訪問、健康や暮らしの悩み相談、勉強会の開催など、様々な活動をされておられます。黒木先生の貴重なお話を聞いて、自らで考え病院から地域へ飛び出した黒木先生の行動力に感動しました。
特別講演では、三原赤十字病院・呼吸器内科/広島原爆養護ホーム舟入むつみ園の有田健一先生をお招きし、「高齢者の生き方に医療者はどう答えるべきか」と題した講演をしていただきました。誰しも老いるに伴って(あるいは老いずとも)、それまで順調だったはずの人生のコントロール感を突然の病気や事故などで失うことがあるかもしれません。それはとても辛く受け入れがたく、こんなはずではなかったと感じるかもしれません。そうして人は必ず死に向かっていきます。そんな人生の終盤をあなたはその時どう生きますか?有田先生には、ACP(アドバンスケアプランニング)について、実際の経験を交えながらご講演いただきました。ACPとは、患者本人と家族が医療者などと一緒に、意思決定能力が低下する場合に備えて、現在の病気だけでなく終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、本人に代わって意思決定をする人を決めておくことです。自分の家族のことも頭によぎりながら、大変興味深くお話を聞かせていただいたと同時に、大変難しいお話であると感じました。有田先生の話を聞いて、私の施設では、臨床検査技師は医師と患者が納得のいく意思決定をするために正確な検査結果を提供することが大切だと再確認できたという意見がありました。今後の自身の業務に生かしていきたいと思います。
学会終了後は懇親会会場へ移動し、懇親会がスタートしました。懇親会では、近くの参加者とグループをつくり、〇×ゲームなどレクレーションが企画され、あっという間に楽しい時間が過ぎて行きました。今回の東部地区学会の参加人数は128人でした。参加された会員、賛助会員の皆様や講師の先生方、ご協力ありがとうございました。また、東部地区理事をはじめ運営に携わってくださった地区委員や学術部門員の皆様、お疲れ様でした。
広報部 池本